“食”の問題シリーズその③〜GMOの安全性について(NEWS No.575 p08)

前回「緑の革命」以降の世界規模での食糧政策において、「種子の支配」による「農民支配」、「農民支配」による「食糧支配」、「食糧支配」による「人民支配」こそが、我々一般大衆を支配するための真の目的であったのだということを述べました。これまでの食糧政策の歴史を振り返ると、米国務長官であったキッシンジャーの「食をコントロールする者が人民を支配する」という言葉通りに、支配層のアジェンダが綿密に計画され、遂行されてきたということがわかります。そして、「緑の革命」の失敗がヴァンダナ・シヴァらの環境活動家たちによって白日の下に晒されると、支配層が次に目をつけたのが、DNA二重らせん構造発見以降、急速に発展してきた分子生物学分野における「遺伝子改変技術」でした。前回も述べたように、この技術が生物(種子など)にも応用され、遺伝子改変されたGMOの生物特許が獲得できるようにお膳立てされると、モンサントなど一部の多国籍アグリバイオ企業もこの分野に進出し、世界中にGMOを拡散・浸透させるべく日夜企業努力をしてきました。それでは、GMOは本当に安全な食品であると言えるのでしょうか?当然ながら、答えは「NO」です。

これまでに、従来の農作物とGM作物の影響を比較する研究は100件以上報告(G. Flachowsky et al. 2005)されており、そのような調査からもWHOを含む主要な健康団体は、GMOは安全であると結論づけています(Washington Post. October 15, 2013)。ここ日本でも厚労省は安全性に問題はないとしています。その一方で、GMOの危険性について警鐘を鳴らす人たちも存在しています。2012年、フランスの分子生物学者であるセラリーニ博士はGMトウモロコシとラウンドアップを2年間に亘って給餌したラットに、腫瘍発生が認められたことをFood & Chemical Toxicology誌上で報告しました。しかし、その1年後に同誌編集長ウォレス・ヘイズが明確な理由もなく突如としてセラリーニ論文を撤回しました(後にヘイズのモンサントとの契約関係が暴露)。その後セラリーニ論文は2014年に他誌上で再掲載されることになりました(G.Seralini et al, 2014.Environmental Sciences Europe)。その後、セラリーニ論文で示されたラウンドアップの中長期的毒性は、細菌のトランスクリプトーム・プロテオミクス・メタボロミクス解析によって確認されています。また、セラリーニによる最近のレビュー論文(G.Seralini, 2020.Environmental Sciences Europe)では、GMOの業界側の動物飼料研究は対照群の飼料もグリホサートやGM作物で汚染されており飼料製造過程に問題があること、「ラウンドアップ」はグリホサートだけでなく酸化石油残留代謝物やヒ素や重金属で汚染されていること、などが指摘されており業界研究は信用できないと結論づけられています。また、1996〜2015年までの30件の研究を解析したGMOのレビュー論文(M.Cuhra,2015.Environmental Sciences Europe)でも、GMOの安全性を疑う結果が報告されています。その論文では、①大半の研究が業界や業界からの資金提供を受けている研究者によるものであること、②大半の研究で栽培中にグリホサートを使用した原料を使用(投与量不明)していたこと、③残留グリホサートの分析と定量解析を行ったのはたった1件だったこと、④業界研究では、グリホサートを使用しない人工的条件下で栽培されたGM作物でテストしていたこと、⑤独立研究では、残留グリホサートやその代謝産物の蓄積が、作物必須成分の違いと相関しており、組成に対する悪影響を示唆していたこと、⑥独立研究では、残留グリホサートやその代謝産物に毒性があることを示唆していたこと、⑦独立研究による根拠がバイオ業界の利益を代表する研究者によって容易に否定・攻撃され、信用を失墜させられている一方で、安全性を主張した業界側の根拠は集中的な精査にさらされることがなかったこと、などを明らかにしています。そして、「業界が提示してきた根拠は、一旦完全に無視されるべきであり、適切な監督の下で管理された研究データや独立研究によるデータで補足した新たな根拠が提示されるべきである」と結論づけています。

その他、遺伝子のジャンピング現象や水平伝播(詳細は割愛)による影響も無視できず、GMOが従来の農作物と「実質的に同等」とは決して言えず、安全な食物ではないということは明らかです。しかし、それでも業界側は今でも安全性には問題ないと主張しており、遺伝子組み換えには飽き足らず、新たな遺伝子改変技術であるCRISPR-Cas9などを応用して「ゲノム編集食品」を作成しています。このようないわば「フランケンシュタイン食品」と言っても過言ではないモンスター食品を、皆さんは本当に食べたいと思うでしょうか?次回はもう少しGMOの歴史を振り返りながら食の安全について考えてみたいと思います。

医療法人聖仁会松本医院 松本有史