12月例会報告 ワクチントーク全国の青野事務局長、古賀理事長の講演(NEWS No.580 p02)

12月例会はワクチントーク全国の古賀真子理事長、青野典子事務局長に講演をお願いした。ワクチントーク全国は、1990年インフルエンザワクチンが有害無益であることが全国に広がり、他のワクチンも見直そうと結成された。モットーは「予防接種について考える人は誰でも参加できる、勉強し、語り合い、行動する、開かれた市民団体」であり「できる人が、できる時に、できることをする」である。私たち医問研も、高橋晄正、母里啓子、山田真、黒部信一氏ら、子供さんがワクチン被害にあわれた藤井氏や藁科氏、栗原氏らから学びながらともに活動してきた。

今回の青野、古賀両氏の講演は、昨今、異常なほどの感染症への恐怖?となんでもワクチン待望?が広がる中、「コロナ騒動のなかで見えてきた、ワクチンの総点検とワクチン被害救済制度」を中心テーマにした10月のワクチントーク全国での両氏のタイムリーな講演を豊富化するものであった。

はじめに青野氏から「Hib・PCVワクチン副反応報告と認定状況2件の審査請求報告」と題し講演があった。(注 Hib, PCV(肺炎球菌)定期ワクチンの対象は生後2か月から5歳未満まで。3回までは27-56日間隔で。1歳になったら追加として4回目接種がすすめられる。同時接種が多い)。Hibワクチンは接種開始後の10年間で約3751万回、副反応報告は製造業者から790件、医療機関から1051件の疑い報告、うち重篤例は722件であった。PCVは10年間で接種3576万回、副反応は製造販売業者から1144件、医療機関から992件、重篤例は680件であった。

死亡報告は約10年間の副反応検討部会で、同時接種83件(8割は一週間以内)、単独接種でHib・PCVで10件あった。

審議数は73件で(認定47件、否認26件)

審議されたうち死亡一時金・葬祭料の認定は20%であった。参考としてコロナワクチン死亡に対してはの認定は88%でありHib・PCVは認定されにくい。

ワクチントーク全国で2件の否認後の審査請求に関わった(死亡例1件、重度障害例各1件)。この2件について青野氏は例会で詳細な手続き経過、裁決の不合理性などを示してくれた。個々では重度障害を残したAさんの例を紹介する。

Aさん;2018年Hib、PCVを4回目同時接種、接種翌日39度、翌々日41度 痙攣で救急搬送。重度な脳症と診断。歩行、座位不能、有意語もなくなる。身障Ⅰ級。自治体は「予防接種との関連は否定できない」として厚労省にあげた。国の認定部会は「一般的に痙攣重積型脳症は突発性発疹を契機に発症することが多い」として2020年国の被害否認通知が自治体にくだされ、その1か月後不支給通知が自治体から家人に送付された。そのためワクチントークのバックアップで審査請求が行われた。

Bさん;2019.03.01 Hib,PCV4回目同時接種。

「2019.03.05いつも通り起床。昼頃より元気なく、左眼が反目、首がぴくぴくしていたように見え、けいれんの前兆と思われた。13:10入眠。16:09起きてこないので確認に行ったらぐったりして息をしていなかった。救急要請。K医療救急センター初療。心電図停止のまま、18:12死亡確認。

死因特定できず、観察医務院で行政解剖。直接死因は急性肺水腫。死亡との因果関係のコンセンサスは得られていない。剖検所見では急死。便からノロウイルス検出(下痢なし)」

次いでワクチントーク全国の理事長、コンシューマージャパンの代表でもある古賀真子氏より「アフターコロナの予防接種 救済制度から考えるワクチンの必要性」と題する講演があった。

古賀氏の講演も、事実を緻密に展開されているが「新型コロナとはなんだったのか」に始まり、「コロナで変わった法律?」「コロナと感染症、予防接種の関係は?」「コロナワクチンはインフルエンザワクチン化するのか」「救済制度から遡って本当に必要なワクチンとは?」「(この現状で)EBMはどこまで医療に寄与できるのか?」と、広範囲に及んでいる。すべてを詳細に紹介したいが、ここではコロナワクチンを中心にワクチン副作用の認定状況と救済制度の問題点について、医問研が十分触れてこられなかったことを古賀氏がクリアにされた部分を中心に紹介する。スライドはすべて古賀氏の作成による

ワクチン副反応については報告制度と救済制度についての法的側面について見てみる(注;ワクチンの副反応ではないか思った時、どこに訴えを持っていくのか、あるいは論議されるべきデータはどこにあるのかなどの疑問を念頭に置くと古賀氏の副反応認定、救済制度への疑問がよく理解できる)。

Aまず副作用の報告制度について。

医療機関は(コロナ)ワクチンの副反応用を疑った場合厚労省に報告する必要がある。スライドは医療者の報告義務について示している。

この場合、報告された副反応疑いを認定審議するための会は二つある。一つは副反応の認定を行う①疾病・障害認定審査会、感染症・予防接種審査分科会ともう一つは救済の有無を裁定する②新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会である。①は審査、評価し、②では被害救済を決める。この両者で報告された事例はPMDA(医薬品医療機器総合機構)で因果関係が評価され、その評価結果が更に①、②で審議される。

B.救済制度について

救済措置の法的側面を示す。

A.の報告制度とB.の救済制度はリンクしていないことを古賀氏は明確にする。

審議、決裁プロセスの複雑性について例を示すと、11月24日現在の死亡例の審議会での進達受理件数は1040件、認定377件、否認49件、保留2件であった。一方、10月27日、PMDAを通じて製造業者から審議会に提出された死亡件数は2334件であった。この両者はダブっているわけではない。

また、こういった認定、救済制度の複雑性は被害者が直接被害を申請したり、否認に対する再申請を行ったりする場合にも多大な影響を与えている。その意味でも法的側面について明確に示してくれた点は大きい。

青野、古賀両氏の講演は、幅広い被害者の救済と必要な予防接種の見直しを強調した青野氏、見直しの中でEBMはどれだけの寄与ができるのかと問いかける古賀氏と、医問研への鞭撻と要望もひしひしと感じさせられた例会であった。