患者に利益明白なジェネリック薬に財源を! (NEWS No.582 p01)

医療現場では、本当に必要な医薬品の入手がますます困難になりつつあります例えば、抗生物質で呼吸器系など多くの細菌感染に対する第一選択アモキシシリン、気管支喘息治療の優れた気管支拡張剤サルブタモールの錠剤や、抗うつ剤トリプタノールなど多種類が入手困難になっています。昨年末の厚労省調査によれば、「限定出荷・供給停止」がジェネリックの26%にもなっています。多くのジェネリック薬製造企業が、業務停止命令を受けるなどで製品を作れなくなり、多数のジェネリック薬が一時出荷停止などをしているからです。2021年に小林化工、日医工、久光製薬など、22年には共和薬品、辰巳化学などが業務改善命令を受け、23年10月にはジェネリック薬最大手の沢井製薬までも2015年から胃炎治療薬の品質試験での不正が明らかになり、処分されています。

これらの背景には、政府の「骨太の方針2015」と「薬価の引き下げ」があると、NHKの解説記事でさえ指摘しています。医療費引き下げのため、ジェネリック薬の使用を5年間で80%に増やすことが目指され、2022年に79.0%を達成しました。ところが、ジェネリック薬の企業を育成するのかというと逆に、薬価が引き下げられました。2011年から17年までの年2.4%の薬価下落率が、2017年から2022年には5%にされて、ジェネリック薬会社の利益が減り、それがコスト削減、品質試験不正につながった、とのことです。

他方で、今年10月から先発品を使用した場合、ジェネリック薬との差額の4分の1が保険からはずされ患者負担になります。ジェネリック薬の入手困難を利用して、先発品の使用を増やし、保険外診療(患者負担)の拡大につなげようとしている可能性があります。

ここで、この問題の解説記事などに抜けている基本的な視点を述べます。

第一に、ジェネリック薬には、新薬と同様に、患者に利益を与えるものと、むしろ不利益を与えるものがある点です。特に、日本では、かつて医問研がその制度の廃止と闘ってきた、薬剤を医者の主観的な判断である「全般改善度」や「安全度」で評価した、科学的評価がなされていないジェネリック薬が多数あります。今回の問題を契機に、科学的な評価でその効果と害が明白で安心して使用できる薬剤を十分に供給できる体制を作るべきです。そのためには、ジェネリック薬の中で世界的に有効性が確認されているものを優先的に確保し、科学的データがないものは中止ないし再評価すべきです。当然、薬価は患者にとっての有効性を基本に決められるべきです。

この場合の臨床試験は、タミフル問題以後世界で認識された方法=利益相反のない研究者が実施し、元データ公表が必要です。コロナワクチンは、研究者の強い要望や裁判で求められた元データでは大変な有害作用があることが明らかになっています。抗コロナ薬ゾコーバは、まるきり効果がないとのデータで、当初日本の審議委員でさえ強く反対したものが強硬に認可されました。しかも、一人51851.8 円の薬価がつき、おまけに200万人分(1千億円強?)政府が買い取っています。これは、全てのジェネリック薬のほぼ1か月分(2022年1159億)に相当します。なお、全医薬品市場は年10兆円規模です。大企業の有害無益な薬剤の認可をせず、その財源をジェネリック薬に回せば現状を大きく改善できると思われます。

患者に有害無益な「新薬」に巨大な公費を投入し、儲からなければ患者に有益な薬を抑制する、これが今の製薬企業・政府の方針です。患者のための薬剤生産を目指すことでジェネリック薬不足を解決すべきです。