例会報告 2
珠洲原発がなくて良かったでは済まない
大惨事から社会を守った珠洲の反対運動に学び地震大国日本から原発を一掃しよう
高度経済成長期、過疎の進む能登半島に2つの原発誘致がもち上がり、電力会社、国・県による攻勢で、推進・反対の地域分断の中、志賀は1993年に運転が開始された。一方、珠洲では北陸・中部・関西3電力による攻勢、国の重要電源地点指定の中、住民の市役所内座り込み、予定地の不売運動などで28年かけて中止させた。ドキュメンタリー動画https://www.dailymotion.com/video/x2e3fj8
2024年元日に発生した能登半島地震は、本震が震度7、マグニチュード7.6で、「最大加速度」は2828ガルと東日本大震災に匹敵するものであった。大地震の尺度となる1000ガルを超える地点は、能登半島の7地点で確認された。
気象庁地震火山部発表によると、震央分布は輪島から珠洲の能登半島北側海岸線に集中している。
国土地理院による全地球測位システム(GPS)の解析では、輪島市で東西に約2m移動、隆起1.3m、珠洲では東西90㎝、隆起90㎝の地殻変動を確認している。
再稼働を控える志賀原発では震度5を受け、変圧器の配管が壊れ、計約7100リットルの油が漏出。外部から受電する系統の一部が使えなくなり、別の系統に切り替えて電源を確保した。使用済み核燃料プールの水が計約420リットルあふれたが、外部への流出はなかった。敷地内にある取水槽の水位が約3メートル変動していた。一時期、原発の約30キロ圏内にある120ヵ所あるモニタリングポストのうち、15ヵ所で測定できなくなるなど、異常事態が発生し、余震が続く中、今後の経過には予断は許せない。
一方、珠洲原発が建設されていると、その規模は135万kW級のものである。原発の耐震基準は最大で約600~1,000ガルの揺れを前提として設けられている。耐震基準は原子炉本体や格納容器などの主要な部分のみに適用され、緊急時に炉心を冷却する非常用炉心冷却装置や配管などの設備は別扱い。本体が地震に耐えられても、全長数キロの配管やパイプの継ぎ目など発電機の周辺設備の弱い部分が壊れると放射能漏れ事故につながる。本体の耐震基準は一般住宅よりも低い。
東京大学生産技術研究所による福島原発事故の環境汚染のシミュレーションでは、偏西風により大半が東側の太平洋に流れているが、珠洲の場合(吹出しを珠洲の☆に移動)は中部山岳地帯から、首都圏を直撃し、中部圏、関西圏の広範な地域の生産、社会生活に大打撃を与えることになる。
今回の耐震を超える揺れと地殻変動では、いかに強固な建築であろうと壊滅を免れない。稼働中であれば臨界事故による核爆発、停止中・廃炉であってもメルトダウンは避けられず、東電福島原発事故以上の大惨事を引き起こすことになる。
図は2016年当時の福島原発事故処理費用の総額であるが、昨年末で1兆9000億円増の23兆4000億円となった。賠償は1兆3000億円増の9兆2000億円。廃炉や除染費用も含めた東電の負担総額は、従来の約16兆円から増える見通しである。事故後13年も経つが、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しはロボットアームなど新工法の失敗が続き、3回目の延長に入るも880トンのデブリは耳垢ほどしか回収できていない。民間シンクタンク「日本経済研究センター」では総費用81兆円と試算されており大損害である。
今回の能登半島地震では、道路、港湾、病院のインフラおよび個人の家屋、生業に多大の被害をもたらしている。原発事故の数10兆円の損害を未然に防いで社会を守ったのが今被災している。
能登の方々と考え、充分な救援・再建とともに、軍拡から防災への政策転換を進め、地震大国日本からすべての原発の一掃を進めるべきであろう。
入江診療所 入江