レプリコンワクチンの危険性について(NEWS No.582 p06)

レプリコンワクチン(スタイベ筋注®)とは?

先日2023年11月28日に、新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチンである「レプリコンワクチン」が、世界で初めて日本国内での製造販売を承認されました。このワクチンは、成人に対する初回接種及びブースター接種(追加接種)目的に、Arcturus Therapeutics Inc. 社が開発したものであり、商品名は「Kostave(コスタイベ)筋注」(開発コード:ARCT-154)です。Arcturus社は、2013年に設立されたmRNA医薬品・ワクチン製剤を開発する企業であり、現在は主に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザを対象としたmRNAワクチンや、その他遺伝性疾患などを対象とした遺伝子治療薬の開発を行なっており、それら製剤に関するいくつかの治験が進行中です。

レプリコン(repricon)とは、簡単に言えば、完全なウイルス粒子の産性能がなく、自己複製能力を持ったウイルスゲノムのことを言います。すなわち、レプリコンから感染性のあるウイルスそのものが産生されることはないけれども、そのウイルス由来の遺伝子が複製され増幅されるということです。そして、「レプリコンワクチン」とは、上述した「レプリコン」がワクチン中に含まれる設計になっています(目的とするウイルスゲノムはRNAとして含有される)。今回承認された「コスタイベ筋注」によって、レプリコンが接種部位近辺の細胞に導入されると、目的とするウイルスゲノム(RNA)が複製され増幅していきます。そして、目的とするウイルスタンパクが細胞内で翻訳され蓄積していく仕組みになっています。ウイルスそのものではないが、ウイルスゲノム(今回のワクチンの場合はmRNA)が“自己増殖”していく。これが「レプリコンワクチン」が「自己増殖型RNAワクチン」と言われている所以です。つまり、レプリコンワクチンは自己増殖型RNA(saRNA)ワクチンの一形態であるということが言えます。これらsaRNAワクチンは、実はすでにインドで世界初承認(緊急承認)されており、他のsaRNAワクチンに関する治験も、現在では韓国(QTP104試験)やブラジル・米国(HDT-301試験)でも行われており、今後世界中で承認されていく可能性が高いと思われます。

コスタイベ筋注の臨床試験

「コスタイベ筋注」の臨床試験は、2021年8月から海外(ベトナム)で第I/II/III相試験(ARCT-154-01試験)が実施されており、国内では第III相試験(ARCT-154-J01試験)が実施されています。そのそれぞれにおいて、初回免疫及び追加免疫による有効性、安全性、免疫原性が確認されたとされています。

ベトナムで行われた17,000人が参加した第III相試験では、レプリコンワクチン(ARCT-154)5μgの2回接種で、接種後56日間の間に発生したCOVID-19症例の解析において、予防効果55%であり、重症症例に対しては43例中41例がプラセボ投与群であったことから、重症化予防効果は95%であったことが示されています。また、安全性に関しては接種後7日間で観察された有害事象の発生率はプラセボ投与群と同等であったことから、安全性に問題はないことが報告されています。

国内での第III相試験(ARCT-154-J01試験)に関しては、プレプリント(未査読論文)が報告されており、mRNA-COVID-19ワクチンを3回接種歴のある健康成人を対象とした試験が解析されています。この報告によると、「Comirnaty」を接種した場合と比べて、「ARCT-154:レプリコンワクチン」を接種した人では、武漢起源株やオミクロン(BA.4/5変異株)に対する免疫応答が優れていたということでした。また、この試験の観察期間中において、主に軽度から中等度の有害事象の発生が認められましたが、ワクチン接種と因果関係のある重篤な有害事象の報告はなく、安全性にも問題はなかったと報告されています。

ただし、この試験で確認されている免疫応答(の改善)に関しては、被験者の数が少なく(例えば65歳以上の参加者は19名のみ)、データ解釈が正確なものであるかどうかには疑問が残ります。また、実際の感染予防効果に関しても中長期(3ヶ月以上)のデータがないため、既承認のmRNAワクチンと比べてどうかなどが全く不明です。さらに、現在新型コロナウイルス感染において主流となっていると考えられるオミクロンXBB変異株に対する防御反応・免疫応答に関する評価もなされておらず不明です。安全性に関しても、既存のmRNAワクチンとの比較になっており、また長期間(1年以上)にわたる評価はなされておらず、ワクチンによる中長期の影響はわかりません。それにも関わらず、この論文の結論として「sa-mRNAワクチン(のような新たな技術)が病気の負担をさらに軽減するのに役立つ。主要な変異体に対して高い抗体価を誘導し、その結果防御期間を向上させる可能性がある」と結論づけています。個人的にはこの論文に示されているデータのみでこのような結論を導くことは不可能であり、“暴論”にも近い結論であると思います。

抗体依存性感染増強や免疫抗原原罪が起こることはおそらく間違いない

そもそも、新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、RNAウイルスですから人体内で感染を繰り返すうちに変異しやすく、すでに武漢起源株と同じ遺伝子(塩基配列)を持ったウイルスなどは、(保存している研究機関以外には)この世には存在していないと言えます。例えばXBB系統に対応しては既承認のオミクロン対応ワクチンでも効果が低下する懸念があるため、XBB系統に対応するワクチン接種の必要性をWHOも発表しています。そのため、日本でも2023年秋以降の予防接種に用いるワクチンは、オミクロン株XBB1.5対応の1価ワクチンを選択することが基本とされています。このような状況で、武漢起源株に対応するワクチンである「コスタイベ筋注」には、どこまで接種する意義があるというのでしょうか??

実際に、「コスタイベ筋注」の審査報告書にも「起源株に対するワクチンである本剤の臨床的位置付けは不明と言わざるを得ない」と記載されています。さらに、今回のレプリコンワクチンも、武漢起源株のスパイクタンパク(全長)をモチーフとした設計になっていますから、これまでのmRNAワクチンと同様に、抗体依存性感染増強(ADE)や免疫抗原原罪(Immunological antigenic sin)が起こることはおそらく間違いないと思います。実際に、これまでのmRNAワクチンは、全長のスパイクタンパク抗原に対して免疫応答が起こる設計になっていますが、新型コロナウイルスに対する中和反応の大部分は、スパイクタンパクのRBD(受容体結合部位:Receptor Binding Domain)に集中するために、この抗原はワクチン候補として最適ではないことが報告されています(Yan Guo et al.2021)。抗体依存性感染増強(ADE)は、このRBD以外のエピトープを介して起こることが示唆される論文も報告されており、そのようなエピトープが少ないRBDベースのワクチンにはADEが誘導される懸念は少なくなると考えられています(Yafei LIU et al. 2022)。

レプリコンワクチンを含めて、これまでのmRNAワクチン開発においても、長期間にわたる抗体産生による液性免疫(humoral response)が持続することが重要であると考えられてきました。しかし、ワクチン接種によって、中和抗体(Neutralizing Antibody)ではなく感染増強抗体(Enhancement Antibody)として働く抗体が主に産生されるとしたら、もはやそのワクチンは有害なものとなってしまいます。ですから、感染増強抗体を産生しない設計のワクチン開発が必要で、より強力に働くワクチン開発を考えた場合には抗体による液性免疫(humoral immunity)だけでは不十分であり、T細胞を介した細胞性免疫応答(cellular immunity)も引き起こすワクチン設計が必要になってくると考えられています。実際に、レプリコンワクチンでは、ウイルスゲノムとして複数の抗原を組み込むことが可能であり、ADEを引き起こさず、かつ強力な免疫応答を引き起こすワクチン開発が可能であるとする論文も報告されています(Sean M. et al. 2022)。

新型コロナワクチンを打てば打つほど、ブレークスルー感染が広がり、重症化する人が増えていく可能性がある

しかし、そもそもmRNAワクチン開発段階でADEや抗原原罪が起こる可能性についてはわかっていたはずであり、それが検討すらされず、危険な全長スパイクタンパクを作らせるワクチン設計にしたのは、やはり何か意図(悪意)があると感じざるを得ません。そしてそれは、今回のレプリコンワクチンにも同様のことが言えると思います。

さらに、複数回mRNAワクチン接種した人の体内産生されたスパイクタンパクによって、IgG4というサブクラスの抗体が増加することがわかっています(Carlo B et al. 2023)。このIgG4抗体は、炎症が長引いた場合に体内で産生される抗体です(Silvia C et al. 2016)。このIgG4が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して免疫抑制を引き起こすということが示唆されています(Vlamidir N et al. 2023)。また、IgG4抗体が抗原特異的な免疫抑制だけではなく、宿主の免疫系全体を抑制してしまう可能性が示唆される論文も報告されています(Hui W et al. 2020, Panagiotis K et al. 2013)。

これらのことは、日本も含めた新型コロナワクチン接種率の高いいくつかの国々で、新型コロナ感染症(COVID-19)の重症化・入院率が急上昇していることと関連があるのではないかと考えている専門家もいらっしゃいますし、私もそのように考えています。すなわち、新型コロナワクチンを打てば打つほど、ブレークスルー感染が広がり、重症化する人が増えていく可能性があるということです。このような不要な(危険な)遺伝子ワクチンが次々に開発されては承認されていく流れに大きな危機感を抱いています。今後も遺伝子ワクチン開発の動向を注視していきたいと思います。

医療法人聖仁会松本医院 院長 松本有史