いちどくを この本『検証・コロナワクチン─実際の効果、副反応、そして超過死亡』(NEWS No.582 p08)

『検証・コロナワクチン─実際の効果、副反応、そして超過死亡』
小島勢二  著
花伝社 2000円+税
2023年6月刊行 

昨年のノーベル生理学・医学賞は、「新型コロナが確認されてから1年ほどという異例のスピードで(毎日新聞 ‘23/10/3)」mRNAワクチンの実用化に貢献したとの業績で二人の研究者に贈られました。同紙によると、ワクチン接種で獲得した抗体は「半年を過ぎると効果が落ちるため、各国では追加接種を進めている*」とありますが、感染・発症の予防効果を示す研究論文の紹介はありません。ですが「重症化予防に効果」との大見出しの下には英国での調査結果や後遺症を抑える効果があるとする米国の研究者の発表内容を掲載しています。この報道内容を受け入れてコロナワクチンを打ち続けることを勧めているのでしょうか?

(*)ワクチントーク全国集会2023集会資料 「アフターコロナの予防接種と救済制度(古賀真子氏)」に提示されている「G7各国の人口あたりのコロナワクチン追加接種数(累計比較)」では、日本の4、5、6回目接種での断トツの増加と日本以外の国ではオミクロン株流行期の’22年7月以降ほぼ横ばいを示すグラフには驚かされます。

医問研ニュース第580号「製薬企業の利益の守るノーベル賞」(林敬次氏)に引用文献として挙げられていた本書の著者は、血液疾患やがん患者の治療を専門分野とされ2016年名古屋大学小児科教授を退官。序文に「現役を退いて6年たった現在、これまで培った知識や経験を生かして、正確なコロナ情報を一般人に伝えるのが、筆者の役目と思っている」との記述があります。

「私がコロナワクチンの接種に慎重な理由」を、予想される変異株の出現と安全性の問題と提起された第1章は「コロナワクチンの接種を目前に控えた」’21年2月、「月刊保団連(全国保険医団体連合会出版誌)」に掲載されたと、追記の<コメント>にあります。以後の経過を鑑みると、上記の指摘は著者の杞憂には終わらなかったことは明らかです。

ワクチン接種後の死亡に関する情報の乏しさを指摘した第2章「コロナワクチンにおける情報公開」は「2回目のワクチン接種率が70%に達した」同10月、ワクチン接種や抗ウイルス薬など製薬企業を利する政策に偏重する政府のコロナ対策費を検証した第3章「コロナ禍がわが国にもたらした財政負担」は22年7月に、それぞれ「月刊保団連」の掲載です。接種担当医にも特別の関心事となるコロナワクチンの感染・発症予防効果、接種後の死亡や中・長期副反応などに迫る論考は、’22年2月より23年4月まで続く言論サイト「アゴラ」への掲載や書き下ろしの内容で編集されています。

第4章では、以下の疑問へのデータ分析や考察が述べられています。

「海外からの報告では接種から半年以上経過すると例外なく感染予防効果は20%以下に低下している」が、厚労省新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード発表では「高い感染予防効果を維持している」何故か?

新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)のデータに基づく調査でありながら、厚労省の公表する感染予防効果に比べて感染症研究所(感染研)の報告では予防効果が低値になる理由は? 重症化予防は?

オミクロン株に対しては? 接種回数別死亡率を知る手掛かりは?

いずれもHER-SYS登録データや感染研の公開情報に基づく分析が記述されています。

しかし’22年9月からの「全数把握の簡略化」により厚労省からの「ワクチン接種歴別の新規感染者のデータ」は公表なくワクチンの予防効果の検証は出来ず。海外では公開されている「ワクチン接種回数別の死亡率」も非公開。また昨年5月8日よりインフルエンザと同等の5類感染症に引き下げられたためか、アドバイザリーボード会議は同8月4日(第124回)以降の開催なく、HER-SYSも同9月30日機能停止。

新型コロナ感染者に関する疫学情報が乏しくなった昨年秋、厚労省は生後6ヶ月よりの接種を本年3月31日まで公費負担とします。

「コロナワクチンの子どもへの『努力義務化』反対」と、医問研ニュース第565号(‘22年9月発行)では主張しました。

‘23年6月発行の本書第5章「子どもへのワクチン接種」では、子どもに接種を推奨する根拠の有無について・感染研が発表した子ども41名のコロナ死亡報告に対する検討・欧米各国の子どもへの接種状況やWHOによる接種に関する新たな指針についてなど豊富な資料が提供されており、情報が制限されている今「接種の是非」を考える一助となり得ます。(伊集院)