原発賠償京都訴訟、国を断罪するバトンを胸に(NEWS No.583 p07)

東日本大震災により発災した福島第一原子力発電所の炉心溶融事故から13年が経過しました。原子力緊急事態宣言が解かれていない今、原発事故に関するニュース報道はさらに小さくなってきています。原発事故は収束の目処が立っていないのに、国民世論へ原発事故は終わっていると印象づけるのに必死な国と東電なのです。

爆発事故により原発敷地から放出される放射性物質の被ばくから逃れるために避難した人々は、時が経つほど苦しい思いを大きくしていきました。多くの避難者がみなし仮設住宅で地に足を着けることなく避難生活を送りました。2015年に福島県が住宅無償提供打ち切りを発表、避難者は次々と住宅を追い出されました。現在、出ていけない避難者に対し、福島県や東京都などの自治体が裁判をして追い出しを強行しています。司法も援護するかのように不当判決を出しています。京都へと避難した人々にも同様に涙枯れることがない日々が流れています。私もその中の1人であり、入退院を繰り返す病に次々と冒されながらも声をあげ続け、裁判で国と東電、あるいは関西電力を相手に闘っています。

2022年、国は避難指示地域の「医療費等減免措置」を見直し段階的に削減すると決定しました。被災者らの反対を押しきり削減方針を打ち出したことは、原爆症を患う方に対する医療補償をしても原発事故被害者に対する補償は打ち切るという無責任な態度です。「福島原発事故被害から健康と暮しを守る会」が同年に結成され、署名活動を展開しています。かろうじて、今年度の医療費減免措置は延長されました。今後は、300人を超える甲状腺がん罹患認定の子どもたちはもちろん、区域外被災者救済として拡大させなければなりません。

また、損害賠償請求集団訴訟では、2022年6月に最高裁での4訴訟(群馬、生業、千葉、えひめ訴訟)に対する国の責任を認めない不当判決が出されました。今年1月26日にかながわ訴訟第1陣控訴審判決が言い渡されました。

貞観津波に関する知見についても主張しているかながわ訴訟。最高裁不当判決が下級審へ多大なるマイナス影響を及ぼし、敗訴続きの不穏な流れができつつある中での勝訴の期待は大きいものでした。東京高裁は、国の賠償責任を認めた横浜地裁判決を取り消しました。国(経産大臣)が規制権限を行使して東京電力に津波対策を命じていても、事故は防げなかった可能性が相当程度あるといわざるを得ない」「貞観津波に関する知見は未成熟」と切り捨てました。屈強な原告団・弁護団・支援者の絆で闘っているかながわ訴訟ですら国の責任を認めさせることはできないのか…。こうして国の責任を問うバトンは、京都訴訟団へと握られたのです。

2013年9月に提訴した原発賠償訴訟原告団(現在56世帯170名)は、 2018年3月の京都地裁判決で原発事故への国・東電の責任が認められました。しかし、避難指示区域外からの避難の相当性を認定こそしたものの、法定被ばく限度(1mSv/年)を避難の基準にせず、避難の相当性を翌年4月1日までの避難に限定、賠償期間を避難開始から2年間に限定、賠償額はあまりにも低額であるため、大阪高裁に控訴しました。あれから6年。もう期日も21回を重ね、結審の日が5月22日に決まりました。

国の責任を認めない理不尽な判決が続く闘いは、大阪高裁「大阪夏の陣」で終わらせます。

京都訴訟の訴えは、原告のほとんどが回答したストレスアンケート調査や当時大阪大学医学系研究科の本行教授に書いていただいた、放射性感受性に個体差があること、年齢が若いほど放射性感受性が高く、影響を強く受けやすいこと、が書かれた意見書。また、国際人権法に関する主張があります。

責任論においては、長期評価に基づく予測(敷地高を超える高さの津波)が予見可能とした前提でのシビアアクシデント対策の一つである施設の浸水防護「水密化措置」を講じさせなかった結果回避義務違反、IAEA安全基準義務違反などを主張しています。

法廷内で、国の弁護人は国が敗訴しないと邪推し寝ていることもあります。法廷外では、責任を取らない国が原発回帰し、能登半島地震での志賀原発での情報を出さないなど国民を馬鹿にする態度に楔を打たなければならないのです。

原発事故の責任を国、東電に取らせ断罪されなければなりません。京都訴訟は必ず勝訴します。

医問研の先生方には支援に感謝しております。

2024年5月22日水曜日14時から結審です。傍聴支援よろしくお願いいたします。

原発賠償京都訴訟原告団共同代表 福島敦子