2022年の死亡率は急増し、2005年から19年の死亡率の推移から推定した死亡率を大きく超えました。推定値を超える死亡率である「超過死亡率」は戦後最大にもなりました。これは、何らかの強い健康障害を与える原因があったことを示しています。
例えば、東日本大震災では、大きな超過死亡が現れました。これは東日本大震災による津波など直接的、ないし間接的健康障害が生じていたことを示します。
2022年の死亡率は、東日本大震災の超過死亡をはるかに超えるものでした。Hagen Scherbらの論文中の下図は、日本の全死因による死亡率のグラフです。縦軸は千人当り死亡率、横軸は年です。左から右肩上がりの直線の中で、2011-13年にかけて上方に大きくブレているのが東日本大震災での超過死亡です。コロナが流行し始めた2020年には、むしろ死亡は減少し、2021年でほぼこれまでの推移どおりの死亡率でしたが、2022年には、かってない大規模な超過死亡が生じ、23年もほぼ同様になっています。
死亡率が年々増加している場合、数年前の死亡率の平均と比べて超過死亡を算出する方法では、自然の増加も含めた、不当に大きな増加となります。減少を続けている場合は逆になります。(Hagen Scherb ら、Med Clin Sci. (2023) Vol 5 Issue 2
この大規模な2022年の超過死亡の原因は何かは、コロナ対策を検討する際の最も重大な課題ですが、冝保らの悪性新生物の論文以外、ほとんど分析されていません。
Gibo M et al. DOI: 10.7759/cureus.57860
《主要な死因16種類について検討》
次表は、死亡率の高い順に16死因を示したものです。今回、これらの死因の超過死亡を検討しました。
<材料>
厚生労働省からe-Statとして発表されている、ICD10に準拠する主な死因別死亡率の経年的なデータです。
<方法>
下図は全死因の死亡率の、2005年から2019年までの推移です。エクセルで近似線の式を求め、2020年、2021年、2022年の死亡率の推定値を計算しました。その推定値と実際の死亡率の値の差を超過死亡率としました。
(横軸は2005年を1とした年:以下同様)
同様に、各死因別に超過死亡を計算しました。
「心疾患」は、近似線が直線でも2項式でも精度はほとんど変わりがありませんでした。(下図)
下図の「老衰」では、近似線が、直線より2項式線(曲線)が一層合致しました。
以上の死因と違い、死亡率の推移が年ごとに大きく変化したり、2019年前の数年間で大きな変化があった場合は、2020‐2022年の死亡率を推定することは困難と考え、それらの死因は除外しました。
例えば、高血圧での死亡率は、2017年より急増し、3年間続いています。超過死亡推定は別の方法が必要だと思われました。
また、肝疾患の死亡率も2017年に急増しているので、超過死亡の推定は困難でした。
とはいえ、除外した死因は、死亡人数が少ないものが多く、超過死亡の全体に対する比率は小さいものと考えられました。
<結果>
(超過死亡を推定出来た死因)
死因別死亡率の順位では、1位の悪性新生物、2位の心疾患、3位の老衰、4位の脳血管障害、7位の腎不全、8位の自殺、14位の胃十二指腸潰瘍の、7死因の超過死亡を求めることができました。したがって、最も主要な死因の超過死亡を推定できたと思われます。
(超過死亡率の死因別順位)
上図は、次表の2022年分の超過死亡を抜き出してグラフにしたものです。超過死亡への最大の寄与は「老衰」でした。続いて心疾患、悪性新生物、脳血管障害、自殺、腎不全、胃十二指腸潰瘍の順でした。
下表・図は、2020年から2022年までの、それらの死因の超過死亡率の推移です。
(老衰)
コロナ感染症を除くと、超過死亡の第一は、「老衰」になります。老衰死とは、厚労省「死亡診断書記入マニュアル」では「高齢者でほかに記載すべき死亡原因のない、いわゆる自然死」となっています。
今回の超過死亡率の推定方法では、総死亡では超過死亡がすでに2020年に10.3、2021年21.1、2022年19.9です。これは、総死亡率の2020年-15.4、21年28.1、22年124.6と比較すると、2020年、2021年の率が高くなっており、2022年に急増している循環器疾患などの経過とも違い、2021年の急増が見られますので、他の死因とは違った原因が関与している可能性もあります。
他方で、厚労省が発表している「年齢調整済み」の死亡率の推移からは、老衰の超過死亡率は他の死因と似て2020年はマイナス増、21年はわずかの増加、2022年では大きな増加になっています。(下図)これは、総死亡や他の死因による超過死亡とよく似た経過です。いずれにしても、2022年の大きな超過死亡に寄与していることは確かです。
(循環器疾患がコロナ死以外の最大の超過死亡死因)
2022年の、10万人当り、超過死亡率15.44の心臓死と、同6.86の脳血管障害の「循環器障害」による超過死亡率は22.3と、コロナ死を除いた超過死亡死因中の最大になります。
循環器疾患による死亡が2022年に特に増加していますが、この年に特に増加した原因は何が考えられるでしょうか?第一に考えられるのは、2021年から増加したコロナワクチン接種回数です。中でも、2022年に急増したのは、追加接種です。
コロナワクチンの有害事象として、臨床試験の最も正確なRCTでも循環器疾患死亡が多かったことがわかっています。それは、公的には隠されてきて、裁判によって公開されたデータで初めて分かったものです。ファイザー製のコロナワクチンBNT162b2のRCTでは、プラセボ(偽薬)群に比べて、ワクチン接種群では心血管障害で死亡した人が3.7倍でした。Corine Mechels et al.(doi10.20944/preprints202309.0131.v1)
老若を問わず、コロナワクチン接種後の、死亡に至りかねない心臓系の有害作用の報告は大変多く、心筋炎・心膜炎、血栓などが多発しています。心筋炎は、頻度として極めて稀だとされていますが、BNT16262mRNA COVID-19 vaccine接種後の、前方視的研究では、301人中7人に心筋・心膜炎などの潜在的病態が見つかり、うち3人は入院したとする報告もあり、多くが見逃されているようにも思えます。
Mansangun S らhttps://doi.org/10.3390/tropicalmed7080196
悪性新生物についてはGibo M らの論文や、その論文の文芸春秋の解説記事をご覧ください。循環器疾患ほどではありませんが、2020、21、22年と急速に超過死亡率が増えています。
続いて多い自殺の評価は社会的環境も含めての複雑な検討が必要と思われます。
その次の、腎不全ですが、以下の論文などで、腎不全患者の悪化など、コロナワクチンの関連が指摘されています。
Canney, Mark et al.
doi: 10.1681/ASN.2022030258
Yebei Li et al.
https://www.mdpi.com/2076-393X/10/5/742
(コロナ感染症による死亡との関連)
死因がコロナ感染症は死因の中では10万人当り、2020年2.26、2021年11.94、2022年は31.12となり、他の死因の超過死亡率と比べると、最大の死因となります。
とはいえ、全ての死因の超過死亡は、今回の推定方法では、2020年―15.36,2021年28.07、2022年124.64ですから、コロナ死は2022年でその4分の1であり、これだけでは同年の超過死亡率増を説明する死因ではありません。
<考察>
すでに、ファイザーやモデルナワクチンの認可前の臨床試験で、生命の危険性もあるほどの「重篤」なワクチンの有害事象が、ファイザー製で10万人当り10.1でした。これは、「コロナワクチンが防いだとする入院」の同2.3の4倍以上でした。モデルナ製では10万人当り15.1の「重篤」有害事象は入院を防いだとする同6.4よりも2.4倍も高かったのです。直接的に死亡を増やしたというデータではありませんが、重篤な有害作用が効果よりも多かったことを示唆しており、死亡も増やしたことも十分ありえることを、すでに認可のための臨床試験段階で、示していたのです。(Fraiman J ら、Vaccine 2022;40:5798-5805)また、前述のように、RCTで循環器疾患死亡がワクチン群がプラセボ群の3.7倍でした。
一人当たりのコロナワクチン(大部分がm-RNA)が世界で最も高い水準で接種された日本で、コロナ感染による死亡も含めて、戦後最大の超過死亡をもたらした原因の詳細な検討がされなければなりません。
(なお、以前に林敬次が書いた超過死亡の文章は一部計算が間違っていましたので、再検討させていただきました。また、今回も計算は簡便な方法を用いましたが、厳密な方法はScherb HらやGibo Mらの論文をご覧ください。)
はやし小児科 林敬次