低線量医療被曝を回避しよう-低線量被曝の障害は医療被曝で明らか-(NEWS No.448 p01)

福島第一原発事故以来、放射線による被曝リスクが大きな問題となっているが、医療現場での日々の診療による医療被曝も重要な課題である。

わが国の医療被曝は世界で突出して高く、診断用放射線による発がんリスクは世界一と言われている。オックスフォード大学Berringtonらの研究グループによる『ランセット』に掲載された論文「診断用X線による発がんのリスク:英国および14ヶ国の評価」によれば、日本のがんの3.2%は診断被曝が原因で、発がんは年間7587名に及び、がん寄与度は英国の5倍であると推計している(Lancet 2004)。この発がん数の年間7587名は、1年間の交通事故死に匹敵する人数である。

わが国の医療被曝線量が多い原因はCT検査時の被曝であり、日本のCT装置の設置台数は1993年の約8000台(世界の1/3以上)から2003年には約14000台と倍増しており、100万人あたりCT装置数は世界一で、英国が7.4台に対して日本は97.3台(2010年OECD調査)と飛びぬけて多くなっており、国民総被曝線量の増加が懸念される。

1回のCT検査での実効線量は胸部CTで約10mSvと言われており、通常のX線撮影の200-300倍被曝線量が多くなる。小児のCT被曝リスクは高く、10歳未満で初回のCT検査以降10年間の超過リスクは、頭部CT検査1万回当たり白血病が1例、脳腫瘍が1例多く発生し(Lancet 2012)、乳児の1回の腹部CTで発がん死亡は1万人当たり23人と推定されている(AJR 2001)。

CTは病気の発見に有用な検査ではあるが、日本の現状での使用状況には問題が多い。軽症頭痛や簡単な打撲での「念のための頭部CT」、咳や痰などで「とりあえず胸部CT」などで、“CT検査は臨床的に正当な理由がある場合にのみ行われる”という基本が守られていないケ-スが相当存在すると考えられる。国民被曝線量を下げるためには、CT検査適応の厳密化が必要である。また、米国や英国では、検査ガイドや患者説明において「放射線には、がんのリスクがゼロで安全であるという線量は存在しないという合意が国際的に成立している」ことを明記してCT被曝の低減に注意喚起している。日本でも国レベルでの被曝低減対策が必要である。

さらに、医療被曝の10mSvや20mSvのレベルでがんの増加が確認されている事実は、現在の福島の被曝線量の実態は、一般住民が十分危険な状態に曝されていることを意味しており、福島での避難や保養などの放射線防御策が早急に求められる。

たかまつこどもクリニック 高松

(2013年年3月24日、大阪国際会議場で開催される近畿小児科学会に医療被曝の障害についてなど4題を発表します。ご参加下さい。)