くすりのコラム No.235 小児の便秘薬:世界的には第一選択とされている「ポリエチレングリコール」が日本にはない?(NEWS No.452 p08)

By: Nicolas Nova (Flicker)

便秘を、便秘と診断し、薬が必要かどうかを考えることは小児科医にとって相当な頻度で要求されることですが、なかなか根拠に基づいた判断ができません。
しばらく前に、BMJに英国国立医療技術評価機構NICEの勧告をまとめた「原因不明の子どもの便秘の診断と治療:NICEガイドラインのまとめ」BMJ2010;340:c2585という論文が載っていましたので、読んでみました。
診断などの問題もあるのですが、このページは薬のコラムですので、薬を紹介します。
まず、もっとも最初に紹介されているのが、ポリエチレングリコール3350Polyethylen glycolです。これは、子どもにも使え、まずこれプラス電解質を使ってみる。(第一選択)2週間使っても便秘が改善しないなら、今度は刺激性の下剤を使う。もし、第一選択薬がうまくいかなかったら、刺激性の便秘薬か、ラクツロースのような浸透圧便秘薬と一緒に使う。親には、排便が多くなったり腹痛を伴ったりすることを伝えておく。その後は同様に、維持療法に入り、数週間続け規則的な排便ができるようになるまで続ける。これには数ヶ月間かかるかもしれない。薬は急に止めず、排便の状態を見ながら徐々に減量してゆく。
などと書いています。もちろん食事の検討も必要です。
ここでふと気がつきました。第一選択薬のポリエチレングリコールなんて薬は知らないが、しかしどこかで聞いた名前です。そこで、「日本医薬品集:医療薬」を見てみましたが全く掲載されていません。どうなっているのでしょうか?実は、「ナトリウム・カリウム配合剤」として、「ポリエチレングリコール+電解質」と思われるものが販売されていました。しかし、それは「経口腸管洗浄剤」として認可されているもので、一般的な便秘には承認されていません。
この表は、同論文に載せられた下剤の一覧です。マグネシウム製剤がないですね。(医薬ビジランセンター発行「オーストラリアガイドライン」には載っています。)

なお、子どもの便秘薬についてのランダム化比較試験RCTはごくわずかしかされていません(コクランライブラリー)。その中でポリエチレングリコールが比較的調べられている薬のようです。安全性は高と評価されているようです。