2013東京全交(NEWS No.456 p03)

<1、全交全体の報告>

東京・日比谷公会堂をメイン会場にして開催された、今年で43回目を迎える全交(平和と民主主義をめざす全国交歓会)に参加しました。毎年、東京・大阪交互に開催されるのですが私の東京参加は4年ぶり。初めて向かう日比谷公園までの街並みから漂う外見のスマートさに「へぇ~!大阪と違うなぁ~!」と感心すると共に、「大阪都構想」の目的って何?、かっこいい建物で私たちの毎日の生活は良くなるの?と考えてしまいました。

全交・開会集会のオープニング曲は月桃の花歌舞団作曲の「スイッチ」。若者たちの厳しい就職難や働くものを使い捨てにする非正規労働・ブラック企業の増加が聞かれる昨今だけに、「99%、この世界を生きる、99%、この世界を変える」で始まる歌を歌舞団の若者が舞台上で元気一杯踊りながら歌う姿には嬉しさを抱きました。

全交には毎回、この世界の現状から生じる自らの課題に向き合い、人権が尊重される世の中への変革に取り組んでおられる人々が海外からも参加されて発言されます。「カネより命!99%が手をむすび世界を変える」と題した今年の基調集会には、イラクから「石油労働者権利擁護委員会」と「キルクーク進歩的青年学生連合」のメンバー、アメリカから「イラク反戦帰還兵の会」の元海兵隊女性隊員、韓国から「韓国青年ユニオン」委員長と労働争議現場での文化芸術活動に取り組む「韓国文化連帯」活動家、そしてフィリピンからは、医問研が20数年間の入園児健診を行っているAKCDF(アバガダ・カユマンギ地域発展基金)ラーニングセンター責任者である音楽家ポール・ガランさん・・・皆さんは自分たちの国での具体的な闘いの報告を踏まえて、国際的な繋がり・連帯が強いられた「失望・あきらめ」から展望を切り開くというメッセージを発せられたように感じました。

また沖縄ジュゴンの海、辺野古への新基地建設反対運動に取り組む「ジュゴン保護キャンペーン」共同代表の音楽家・海勢頭 豊さん、「(悪質なローン貸付制度になっている)奨学金問題対策全国会議」の弁護士さんや沖縄で「奨学金返済に悩む人の会」を結成した「沖縄なかまユニオン」代表者の訴えを聞くことも出来、「こんな事もあるんだ、やっぱり世の中の理不尽さに目をつぶって、前期高齢者の生活をスタートすることはできないなぁ」と自分の立て直しの必要性を学びました。

その思いを強くしたのは、やはり「総被ばく時代を、フクシマと共に闘って生きる」と題した基調集会第1部や翌日の分科会「放射能による健康被害を止めよう」でした。福島の在日フィリピン人ネットワークづくりの代表者、郡山で子どもを放射能から守るために主婦たちが結成した3a!郡山(安全・安心・アクションin郡山)の代表者、福島県首長の中で唯一、町民の県外避難を実現させた前双葉町長の井戸川克隆氏、福島から東京へ避難し、自主避難を支える事業体を立ち上げられた方、京都へ避難され「放射能健診」を求める署名運動に取り組まれている「避難・移住・帰還の権利ネットワーク」の避難者、「原発はあるだけで放射能をまき散らす、原発は人殺し!」と訴えられた元敦賀原発下請け労働者、長年に亘り反原発の運動を続けておられる「さよなら柏崎刈羽原発プロジェクト」や「さよなら原発四国ネットワーク」のメンバー、全国の脱原発の声を束ねる「経産省前テントひろば」の代表者、住所非公開・焼却炉小型化で環境アセスメントを不要にした高濃度放射性廃棄物処理場の建設反対運動を続けられている「鮫川村焼却炉問題連絡会」の方、文科省が進める放射能安全論に基づく「放射線副読本」を批判、改定を迫る取組を報告された教育現場の方、そして医問研の高松勇氏による、放射能汚染がもたらした「健康被害の実態」報告・・・多くの方々の実践に接し、自分の拠って立つ基盤を何処に於くのかを迫られると共に、「一緒に粘ろう!」と背中を押された集会でした。

小児科医 伊集院

<2、原発事故関連報告>

本年7月27日―28日と東京で全国交歓会に参加した。27日に第一部「総被ばく時代を、フクシマと共に闘って生きる」が開催され、福島の現地で留まり健康被害が顕在化する中で支え合いながら被害の拡大に対して声を上げる人々が参加された。さらに避難した人や原発立地地元で原発をなくすために活動する人々が一堂に会して、すべての原発廃炉とすべての被災者の救援を求めて活動の報告と運動の展望が語られた。

その中で「福島第一原発事故による健康被害の実態―甲状腺がん多発を受けて」と題して発言させていただいたので概略を報告する。

福島第一原発事故による周辺の汚染は深刻で、現在10万人を超える人々が強制避難されており、さらに、東北から関東地方にかけて広範な放射能汚染が生じ、日本の法律を厳密に守ろうとすれば、一般の人が許される被曝線量である40,000Bq/m2を超える汚染地帯を「放射線管理区域」として無人にしなければならない。その面積は、20,000平方Kmにもおよび、約1000万人の人々が該当する。

甲状腺がん27例の多発は異常事態である。本邦の小児の甲状腺がん発生率(国立がん研究センタ-の年次統計)と比較すると(ポアソン分布を用いた統計分析)、2011年度11例の発生では、53.97倍の多発。2012年度16例の発生では、23.75倍の多発であった(図1.参照)。

福島県での発見率(対10万人)とチェルノブイリでの山下らの超音波スクリ-ニング(1991-1996年)での発見率と比較すると、福島の甲状腺がん多発はチェルノブイリの一部地域に匹敵している(図2参照)。なお、福島県での発見率における図中の補正値とは、一次検診受診者のうち二次検受診率は81%(2011年)、27%(2012年)であることを考慮し、発見率を求める際の分母数になる一次検診受診者数を二次検診受診率=受診者/対象者で補正したものである。

2012年度16例の発生は、福島県中通り=相対的低線量地域での多発が持つ意味を確認した。従来、「被ばく線量が低く、健康被害はない」と宣伝されてきた地域での多発であり、この地域でも、相当の被ばくが存在した事実、今後、様々な健康被害が生じることを示している。さらに、人・Svで考えれば、福島県中通りの1/10の被曝線量で汚染された地域も、人口規模が10倍ならば、どちらも発生する健康被害は変わらないことを考えれば、今後、首都圏でも健康被害が顕在化する可能性を示してしる。

まとめとして、被ばく軽減策(避難、保養、食の安全)、健康障害を明らかにさせる調査、科学的な治療と補償の重要性を確認した。

(たかまつ小児科 高松)