臨床薬理研究会 臨床懇話会(NEWS No.458 p06)

例会内容の一部の報告
<夢の糖尿病薬に副作用の強い疑惑>

先月号の糖尿病の新薬についての小林さんからの報告を受けて、臨床薬理研で話し合いましたので、再度簡単に報告します。

先月号でご紹介した様に、イギリス医学雑誌に掲載されたDeborah Cohenの論文で、Ⅱ型糖尿病に対して夢のような効果が期待されて登場したグルカゴン類似ペプタイド(GLP-1)拮抗薬とDPD-4抑制薬が、害のある細胞増殖をおこす力があり、膵炎や膵臓癌や他の臓器障害を起こす可能性が高いことを問題にしています。
この中には、甲状腺癌も増加があります。

その一つ、商品名「エキソナチド」の日本での認可の際の審議結果報告書をざっと見るだけでも、ラットの実験で甲状腺腫、甲状腺や腎がんの増加が認められることを、表1でご紹介します。この実験の暴露量AUCは、人間での通常量使用の16倍程度なので、発がん性試験としては大変な問題です。

ところが、「発がん試験」で、このC甲状腺癌というのは、ラットにはあるが人間にはないレセプターを持っているものなので、人間には「関係ない」とあっさり切り捨てられています。
さらに、腎癌についても、雄でゼロ、対照群との比較では有意差なし(数を増やせば出る)、2494人の長期臨床試験でゼロ(3人は出る可能性あり)などと説明され、承認されています。この「発がん試験」は何のために行われたのか不思議です。

さらに、この報告書を読んでいると、降圧剤ディオパンの捏造データほどではないですが、それに近い数字が並んでいました(表2)。
この表の6個平均値のうち4個が60になっています。不自然さを感じませんか?(詳しく検討していませんが、他の表ではあまり不自然な数字は見いだせませんでした。)

Deborah Cohenの論文は、最後に、これらの薬の副作用として、膵臓臓癌や甲状腺癌などに注意が必要であることを指摘して終わっています。読者の皆さんも是非注目して下さい。

表1

表2