周産期死亡が福島とその近隣5県と千葉・埼玉・東京で明らかに増加しているとの論文を掲載することができました。
> PDFで閲覧(2017/4/24記 2017年4月の小児科学会の討議資料に所収しました。修正が加わっておりますので、こちらでお読みください。)
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ドイツのこの分野で非常に著名なHagen Scherb氏と森国悦・林敬次の共著として、Medicine ®というインターネット専門の査読付き医学雑誌に掲載されました(Google で、「perinatal mortality fukushima medicine」で検索し、無料で入手できます。以下のFig.は論文のものです。)。
<内容の概略>
2001年から順調に減少していた周産期死亡(妊娠22週から生後1週までの死亡)率が、放射線被曝が強い福島とその近隣5県(岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬)で2011年3月の事故から10か月後より、急に15.6%(人数としては約3年間で165人)も増加し(Fig.3)、そのまま2014年末まで推移しています。また、被曝が中間的な強さの千葉・東京・埼玉でも6.8%(153人)増加(Fig.4)、これらの地域を除く全国では増加していませんでした(Fig.5)。これは、チェルノブイリ後に、ドイツなどで観察された結果と同様です。
チェルノブイリと違い、東日本大震災では震災と津波の直接の影響がありました。これまでの同様の調査では、震災直後の一過性の周産期死亡率の増加がありました。そこで、今回は津波の人的被害が著しかった岩手・宮城と、比較的少なかった他の4県を分けて検討してみると、震災直後の増加は岩手・宮城で著しく(Fig.7)、他の4県では見られませんでした(Fig.6)。これは、津波・地震の一過性の増加は津波・地震の影響によるが、10ヶ月後からの増加は津波・地震の直接的影響ではない可能性が高いことを示します。
なお、この論文の強さの一つは、誰もが入手できる、厚労省発表の公的な統計から導いたもので、元データへの疑問はつけられません。
限界性は、その増加が被曝と関連することを直接証明したわけでないことです。しかし、この増加を説明するその他の要因は、地震・津波の直接的な影響も含め考えにくいことを論証しています。
最後に、今回の結果は政府の帰還政策と関連すること、オタワ宣言が強調するように、政府として、健康に対する環境要因を検討することを求めています。
<論文の意義>
- 甲状腺がんだけでない障害も既に生じていることを明白にしました。
- 被ばくによる障害が、福島県以外の東北関東、さらに、東京・埼玉・千葉にも広がっていることも示しました。
- これまでも、同様の結果を示すいくつかの研究が発表されてきましたが、今回は初めて査読付きの医学雑誌に、福島原発事故としか考えられない原因で、周産期死亡が増加していることが論文として掲載されました。
- 内容的には、初めて福島とその近隣5県を津波の直接的な人的被害の程度で2群に分けて分析することにより、震災直後の死亡率の増加が津波の直接的な影響によることを示すことができました。
- ドイツの専門家との、交流を発展させ、今回初めて共同作業での成果をだすことができました。
<これからの運動上の方針>
この成果を、できるだけ多くの人に知らせます。
健康署名運動などに積極的に活用を求めます。
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・さらに詳しい解説を掲載しました(2016.11.24)
・周産期死亡率急上昇の件が、各紙に掲載されました。
「周産期死亡率が急上昇」下野新聞、他各紙に掲載されました