「季節性・軽症インフルエンザへの抗インフルエンザ薬は推奨しない」との「日児見解」を大阪小児科学会雑誌に紹介(NEWS No.491 p05)

インフルエンザ治療に関する日本小児科学会(日児)見解を、大阪小児科学会雑誌2016年6月号(33巻2号)P12-13 に掲載することができました。>> こちらから全文閲覧できます

<掲載までの経過>

2014年12月22日に、日児会長と同予防接種・感染症対策委員会から、私たち医問研会員10人からの要望書に対する回答が届きました。その内容は、これまでもお伝えしてきました表題のような「季節性・軽症インフルエンザへの抗インフルエンザ薬は推奨しない」というものでした。これは、2014年の日児「インフルエンザ対策ワーキンググループ」見解「抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない」より大きく進んだ、画期的な内容だったのです。

小児科医2万人が加入し、全小児科医3万人を代表する日児が公式に表題のような意見を表明したことは、世界でも例を見ないと思われます。これを全国的に宣伝すれば、不要有害な抗インフルエンザ薬の使用と副作用を大幅に減少させることは間違いないと思われました。しかし、昨年は被曝に関する学会活動や本の出版などに追われて、その行動が延びてしまいました。

せめて大阪だけでもと考え、2015年9月に大阪小児科学会雑誌の「誌上投稿」欄への文章を書き、掲載をお願いしました。ところが、この文章の扱いをめぐる日児とのやり取りで、私たちの2回目の要請文に対する2015年7月26日付の回答が私には届いていないことが判明しました。日児よりの再送後に文章をわずかに書き直したために、昨12月の学会誌に載せることができませんでした。その後も、ページ数の問題が生じて掲載が延び、やっと9ヶ月ぶりに掲載の運びとなりました。

この間、同学会地域医療委員会(高松勇会長)で議論し、その結果を同学会の運営委員会に報告してもらったことが、この文章を同会新宅治夫会長や運営委員の皆さんに理解していただき、掲載を実現するうえで大きな力となりました。

<この見解を大阪から全国・世界へ>

大阪小児科学会総会などの議論の過程で、会員の方々がこの日児の回答をほとんど知らないことがはっきりしました。この文章は、同学会員の多数に読んでもらえると思いますので、大阪の小児科医でこの日児の見解を知らない会員は少なくなるのではないかと思われます。繰り返しになりますが、圧倒的多数の「軽症・季節性」インフルエンザには抗インフルエンザ薬は不要であることが認識されれば、不要・有害なこれらの薬の使用が大きく減ることが期待されます。

さらに、この文章には、日本で最も売れているイナビルが、海外でのBiota社の治験で効果が証明できず、世界的には売れないことも書いて、問題提議をしています。

今後、この日児見解を大阪から全国に広めなければなりません。それは本来日児の責任ですのでその要請もしなくてはなりません。もちろん、日本感染症学会などの抵抗も強いと予想され、マスコミも含めた方々の協力も必要です。

世界的には、米国CDCなどは積極的に使用を推奨しています。他方で、コクランやBMJなどの運動の成果として、議会でも議論されたためか、英国政府のPublic Health Englandは健康な人への投与は不要としています。これやコクランの結果を基本に、日児の見解も世界に紹介することも重要かと思います。世界への発信には海外の雑誌への投稿なども必要です。みなさんの力をお借りしなければできませんのでよろしくお願いします。

なお、日児への要望書とその回答は、医問研ホームページに掲載しておりますので、ぜひご覧ください

はやし小児科 林敬次