いちどくを この本『子宮頸がんワクチン問題 社会・法・科学』(NEWS No.566 p08)

『子宮頸がんワクチン問題 社会・法・科学』
メアリー・ホーランド、キム・M・ローゼンバーグ、アイリーン・イオリオ 著
別府宏圀 監訳
みすず書房 5,000円+税
2021年9月刊行

<その3>

10月4日厚労省はHPV(ヒトパピローマウイルス)の9種類の遺伝子型に対応する9価ワクチン(メルク社「シルガード9」’20年に薬事承認済み)を’23年度早期から予防接種法に基づき努力義務を課す「定期接種」として開始することを決めた。本年4月から「積極勧奨」が約9年ぶりに再開された同ワクチン2価(グラクソ・スミスクライン⦅GSK⦆社のサーバリックス)と4価(メルク社のガーダシル4)に比べて効果が期待できるとのこと。

9価には、発がんに「ハイリスク」とされるHPV16,18,31,33,45,52,58、および「ローリスク」で性器いぼと関連するHPV6,11のVLP(Virus-Like-Particle ウィルス様粒子)を含む。2018年発行の本書には「GSK社はおそらく販売不振のためにサーバリックスを米国市場から撤退」「メルク社はガーダシル4を新しい9価ワクチンに置き換えた」とある。厚労省も今年の4月時点では「シルガード9」への変更が視野に入っていたはず。

本書に、ガーダシル4接種者は、シルガード9の再接種を受けるべきか、どの点に留意すべきかについての論考が書かれている。

「少なくとも二百種あるHPV型のうち、12―18種類は人類に対し潜在的発がん性があるとされている。」かつて「Vaccines(第5版)」には、HPVの遺伝子型は約150種、その中でも粘膜上皮に感染し発がんに関連する遺伝子型は12種と図示されていた。研究の進展による新しい遺伝子型の発見が認められている。同ワクチンに関する厚労省のパンフレットにも「ワクチンをうけた人も、20歳を過ぎたら2年に1回、必ず検診を受けて下さい。」「ワクチンで防げないタイプのHPVもあります。」と掲載している。

昨年4月日本小児科学会では、「HPVワクチン啓発のキーパーソンは小児科医」と題する教育セミナーを開催。「HPVワクチン啓発に小児科が重要な理由」を挙げて、同ワクチン推進を明らかにしている。

本年4月の新聞には大きな見出しで「HPVワクチンの勧奨再開」を宣伝、小見出しで「機会逃した世代救う制度も」と主張する産婦人科医による次のような主張が掲載されている。

*「諸外国で報告されたデータを見ると、12~13歳で接種した群で子宮頸がんの発生率は87%低下しています」フィンランド・米国・スウェーデンなどのデータへの批判については、医問研ニュース522525555号(林敬次氏担当)の記事をホームページで参照下さい。

*「15年に名古屋市の女性約3万人を解析した調査があり『副反応とみられる症状の発生率はワクチン未接種でも変わらない』という結果でした」←ニュース512号臨床薬理研・懇話会報告(寺岡章雄氏担当)、『薬のチェック』速報版 No199を参照ください。

*「子宮頸がんがあり、その原因がウィルス感染と明らかである以上、ワクチンを活用しない選択肢はないでしょう」←厚労省パンフレットにも「HPVワクチン接種後に生じた症状に苦しんでいる方に寄り添った支援」が特記されている状況でのこの記述は余りにも楽観的と思われます。

本書の「Ⅲ HPVワクチンの科学の深層へ」では先ず、セインヴァクス(Sane Vax)「安全で手頃な価格、必要かつ有効なワクチンを推進する市民団体」の紹介がある。(https://sanevax.org)同団体は、HPVワクチンが安全という主張に異議を唱える国際組織のひとつで、障害を受けた子どもたちの家族を支援グループなどに繋ぐ役目も担っている。ガーダシル接種被害者の訴えを受け、その活動を通じてHPVワクチンの中にHPV-DNA断片の混入があることをFDA(米国食品医薬品局)とEMA(欧州医薬品庁)に表明させている(第19章 科学の通説への異議申し立て)。

次はアルミニウム含有アジュバントについて。「何十年もの間ワクチンに使用されてきたが、プラセボを対照とする包括的な安全性試験は存在しない。」には恥ずかしながら筆者もビックリ。免疫反応を刺激する役目を担っているにも関わらず、FDAはアジュバントを「添加成分」「不活性成分」としている。従来より強く免疫反応を活性化するとして採用されたアジュバントAAHSは「厳密な安全性分析」に基づくことなく、ガーダシルの臨床試験ではプラセボとして対照群に投与されていた。

続いてガーダシル4と9には、乳化剤ポリソルベート80、緩衝剤ホウ酸ナトリウム、ヒスタミンと関係あるL-ヒスチジン、酵母、核酸分解酵素ベンゾナーゼなどが含まれているとある。

ワクチン接種後に「ある人々だけが自己免疫症状を発症し、他の人々は大丈夫そうに見えるのはなぜだろうか」については、世界での研究成果が記述されている。HPVワクチンには問題山積みと思われる。

小児科医 伊集院真知子

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